夏季報
原田夏季
日本人中国語講師。
高校で中国語に出会い、大連へ留学。講師歴は18年。中国語で何か楽しいことができないかと常に考えている。

大学院修士課程を修了しました。

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その時、私は40歳でした。「30代で本を出版する」という目標を、2冊(『中国語の口』『声出しレッスン』)という形で叶えることができた。大学院に入学したのはそんな時でした。

当時、私はSNSでたくさんの人と出会い、今までになかった横のつながりができ始めていました。使っていた教材の著者の方、大学の先生、英語や韓国語の先生、中国語学習者の猛者の面々。その人たちは私にとってとても大事な存在で、日々多くの刺激を受けていました。

でも、そういった人たちの「素晴らしい面」と自分を比較して、悩んだ時期がありました。

私は中国語の実力も、教え方も、経歴も、なにもかも劣っていると思ってしまう時期。そういう時期はこれまでに何度もあったのですが、SNSはちょっと事情が違います。SNSで他の人の成果だけが目に留まるようになり、それがその人たちのすべてだと思いやすい状況になってしまっていたのです。

焦った私は思い出します。自分が大学に行っていないことを。(経済的な事情などです)以前、本の編集の方とお茶をしている時、「いつか取りこぼしたものを取りに、大学に行ってみたい」と言ったこと。尊敬している先輩が子育てしながら大学院に通っていたことを。

ちょうど職場の人間関係で悩んでいたので、もう勢いは止まりません。よっしゃ仕事やめて大学に行こう!

でも大学か…4年って結構長いな…。現役の大学生に混じって4年もちゃんとやれるのかな…。と思っていると、高卒でも「個別入学資格審査」 を経て「大学卒業と同等の学力」があると認められれば、大学院に入学できる場合があると知りました。

よし!これなら2年で卒業じゃい!大学院に行くぞ!

これが死ぬほど甘い考えだと気がついたのは入学してからでした。

研究計画書を書くゾ

さて、そうと決まればどの大学院に行くか考えます。とは言え、1.通える範囲内  2.専門(中国)これだけでもすごく狭まります。子育てしながら、仕事もしながら…というわがままセットには、たとえ都内と言えども限界があるというもの。通える時間は限られるため、何より近場が希望でした。

更に、「研究計画書」の作成。

研究なんて自由研究くらいしかしたことない。さて、何をテーマにしよう?やっぱり発音、とくに声調がいいかな…などと考えていたところ、友人に「テーマをとことん絞れ、大きくするな、ニッチに!マニアックに!」というアドバイスを頂きました。「なるほど、オタク全開で話せるテーマにすればいいんだな」と言うざっくりした理解をし、研究テーマが定まりました。このアドバイスはありがたかった。

論文もろくに読んだことの無かった私でしたが、テーマを絞ったおかげでその後の軸となる先行研究も見つけられました。研究計画書もなんとか完成!お友達の存在。頼もしい。

面接試験

「学部卒レベルの学力がありますよ」というアピールをどれだけできるのか…そんな不安を抱えて挑んだ面接試験。正直あまり自信がありませんでした。

先生方がとても優しく質問してくださったのが印象的でした。(今では考えられないけど、緊張して先生を怖がっていた)

「本学に通って、どのようなことを学びたいですか」と質問を受けた時、とっさに「物事を深く考える癖をつけたいです。」と答えたのをよく覚えています。卒業した今、以前よりもそうなれた実感が確かにあります。嬉しいな。

結果、無事に合格。ほっとしました。単著があったことが大きかったのかもしれません。感謝です。

ありがとう長期履修制度

私の進学先には、「長期履修制度」がありました。これが本当にありがたい制度で、簡単に言うと「君忙しいのね?わかった、それじゃ2年分の学費で最長4年在籍していいよ」というものです。サブスクが4年に延長される!!!

更に、学費面でも2年分の学費を最長4年に分割してくれるので、とても助かりました。(私の在籍していた学校の制度です。)期間中、1回だけ短縮が可能だったため、見積もりが甘い私は「さすがに4年は長いな。でも忙しくて単位が取り切れない可能性を考えて4年申請しておこう。大丈夫そうなら縮めればいいし…。」のノリで申請しました。

結果4年で単位ギリギリだったので、短縮などもってのほかでした。

授業のレポート提出や発表に終われ、とてもとても3年に短縮なんてできませんでした。2年目には仕事が忙しくなり、更に息子が小学校に上がり生活の変化も重なり、1つも単位が取れなかった学期がありました。この頃、無理をして体調をくずしたり、息子のケアがうまくできないことに大いに焦りました。重なる時は重なるもので、仕事の忙しさと息子の不調などで、まっったく余裕がなくなってしまいました。この時救われたのは、先生のこのお言葉。

「家庭が一番、研究なんて家庭を壊してまでやる必要はありません。」

ゼミが土曜日だったので、子どもの予定が入りやすく休みがちな私には、このお言葉は本当にありがたかった。この言葉がなかったら辞めていたかもしれません。それくらい、仕事と家庭と研究の3足のわらじは不安定なものでした。いやー、いつものことながら見積もりが甘すぎる。

面白い同学たち

4年間、同じゼミの同学は全員中国人でした。みんな若くて、活気があって楽しかったです。

いろんなことを教わったし、中国語でわからないことがあるとすぐに聞けて助かりました。修論を書いていた時期は特に仲間意識が芽生えて良かったです。やはり同じ方向を向いて同じような作業をするって大事。

それぞれ面白いテーマで研究していて、毎回の発表はいつも知らないことばかりで勉強になりました。同じ学校で机を並べて授業を受ける、このくらいしないと大人になってからの交友関係は広がらないものです。友人が増えたのも大学院に行って得たものの一つです。

楽しい授業

私の履修した科目は発表型の授業が多くありました。参考書籍の何ページから何ページは〇〇さん担当で〇月〇日に発表ね、のような形式です。私はこれまで発表形式の授業をうけたことがほとんどなかったのですが、「発表…つまりこのテーマで授業をしろ、ということですね?それなら得意です!」という理解で頑張りました。付け焼刃の知識でも、人前で授業をすることくらい頭に入ることはないというのは、今までも大いに経験してきたことでしたので…。

毎回の発表の準備は、いつもの授業準備に近い作業でした。それでも普段読まないようなジャンルの本を読むので、時間がかかるかかる…。結局は本をまるごとざっくり読む→大事そうなところに線を引いたり補足メモしたり→あとで線のところを中心に段落ごとにまとめる、という基本のやりかたに落ち着きました。

中国・中国語関連以外の授業も楽しく、毎回素人丸出しで質問できるのが楽しかったです。特に仏教の授業は今後の人生観に大きく影響すると思われます。

4年で得たもの

本を買うハードルが下がったし、以前よりもたくさん読むようになりました。読みにくい本を読む技術も上がった気がします。

インターネットで調べられることと、本から得られるもの。それらの使い分けがうまくなりました。

偉大な先生方と出会い、面白い同学たちと話す機会が得られました。

時間の使い方は…あまりうまくなっていない気がします。今でもずっと何かに追われている気がする。

物事に対して、一度立ち止まって考えるようになりました。疑う癖ができた。

やっぱり大変だったこと

長期履修制度には助けられましたが、4年の間同じ研究テーマを考え続けるのは厳しいものがありました。

4年という年月は、人が変わるには十分な長さで。ずっと同じモチベーションは保てませんでした。1年目で自分のテーマに関係ありそうな授業を受け、モチベは高まっていたのですが、2年目、3年目となると興味が他へ移ってしまうことがありました。また、修士論文は4年目に書き始めましたが、骨幹となる部分を1年目に書いていたので、4年目に方向性を思い出すのに苦労しました。

修論は方向性が決まるまで悩みました。全体のストーリー(骨組み)を考えるにあたり、毎回先生に相談していくうち、先生から良いキーワードをいただいた瞬間があり、そこから一気に進みました。先生が偉大すぎる。

まとまった文章を書くには骨組みが大事だなあと思ったのでした。(わかってなかったんかい)

また、大学院の授業時間の調整にも苦労しました。午前中は開講していなかったため、子供が家にいない時間を狙って履修選択をするのが難しかったのです。受講生が少ない授業では先生にお願いして時間を調整してもらうこともありました。結局夜間の授業は一回も取れませんでした。さらに昼間は仕事が入るため、学校の近くになんとか場所を確保し、オンライン授業(私が教えるほう)などの仕事をしてから、走って授業を受けに行くこともありました。

感謝

何より家族に支えられた4年間でした。子育てと仕事と研究は、家族がいなければ絶対に無理でした。これからの人生において、この感謝はきっと私の根底にあり続けると思います。具体的に言うと、一口だけ残ったごはんが入っている炊飯器がずっと保温になっていても「院生生活支えてくれたしな」と思える。そんな感じです。

好きなことをやれる環境にあること、本当に感謝です。ありがとう!

※大学院進学の条件はその大学によって異なります。あくまで私個人の体験談に留まりますので、ご容赦ください。

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