夏季報
原田夏季
日本人中国語講師。
高校で中国語に出会い、大連へ留学。講師歴は18年。中国語で何か楽しいことができないかと常に考えている。

第3声の教え方から考える中国語教育の視点の差

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最近は中国語をアプリで勉強する人がとても増えました。気軽に始める手段として、多くの人が中国語に触れられるいいツールだと思います。

しかし、気になる問題もいくつか目につくようになってきまして…。

今回はその問題の中でも「第3声の教え方問題」について、私の考えをまとめます。

目次

第3声は2種類あるよ

この第3声、声調の中でもちょっとクセ強です。

というのも、第3声にも2種類あるから。「全3声」と「半3声」です。

第3声が単独で発音される場合、最後の部分が上がります。例えば「五 wǔ」「水 shuǐ」などですね。これを「全3声」と呼びます。

一方、第3声の後に何も続かない場合(文末)も、全3声になると言われています。しかしこちらは低いままおわることもしばしばあり、このルールは状況や個人差が大きい気がします。

「半3声」は、文中に第3声が現れる場合に、語尾が上がらず低いまま終わる音です。

さて、全3声と半3声、どちらが出現回数が多いでしょう?

これはもう圧倒的に半3声です。全3声はほぼ単独のみですので、使用はかなり限られるのです。

ところでこの全3声と半3声、一般の中国語ネイティブは知らないことがほとんどです。

「半3声?何それ?第3声は第3声だよ!」と言われることうけあい!(教えてあげるとびっくりされます)

第3声と第2声の混同

第3声に2種類あること、それ自体は大きな問題にはなりません。最初に「こういったことがあるよ」と提示しておくことが大切です。

その際には「半3声のほうが圧倒的によく使う」ということも必ず説明し、第3声のデフォルトを半3声に設定します。

とにかく第3声は低いまま!低いだけの音だよ!後ろが上がる全3声はイレギュラーだよ!と教えるのです。

なぜか?それは全3声と第2声には共通点が多く、混同が起きやすいからです。

全3声と第2声の共通点、それは後半の上昇です。

この共通点があるため、文中の第3声を後半上昇の全3声にしてしまうと、第2声と区別できなくなってしまうのです。

これを防ぐためには、第2声と第3声の音の特徴をしっかり押さえておく必要があります。

この「第2声と第3声の区別」のコツについては、こちらの動画で詳しく解説しています。見てね!

第3声の教授法の違いが起こる背景

さて、この半3声を基準とする教え方は、日本の教材ではすっかり定着した感があります。

拙著「ゼロからはじめる 中国語書き込みレッスン」(アルク)より

上記のように、声調の図示では後半の上昇部分を点線で表すものが増えました。

私が中国語を初めて習った時、教科書の第3声は当たり前のように「下がってから語尾が上がる」としか書かれていませんでした。あとは先生による補足に頼っている状態です。

この頃(25年くらい前)は教材の数も多くなかったため、使われている教材がほとんど中国で発行されている教科書でした。

私世代の中国語学習者はほぼこれで勉強していたのでは

これは仕方のない部分もあります。というのは、少し前にも触れましたが、一般の中国語ネイティブは全3声も半3声も知らないからです。

中国語ネイティブも幼稚園や小学生の時に学校でピンインを習う時間があります。日本の学校で国語の時間にひらがなやカタカナを習うのと似ていますね。

小さいころから中国語をシャワーの如く浴びつづけ、「第3声?ああ、”水”や”五”の発音ね、はいはい」という理解の中国語ネイティブには、全3声、半3声のような説明はあまりピンと来ないのかもしれません。

そのため、第3声の説明に半3声の存在が書かれていない教材やアプリも多く存在しています。

某アプリでの第3声の説明

これでは、第2声と第3声の混同が起きてもまったく不思議ではありません。

第3声を「低いまま」として教えることは、その頻度の高さを考えた教育的な判断です。

こういった教授法の工夫はこれまでの経験の積み重ねです。教材やアプリの優劣を決めるものではなく、中国語ネイティブ向けの説明とゼロからの外国人向けの説明はそもそも出発点が違う、ということを意識しておくと、教材や先生をうまく使い分けられるのではないでしょうか。

これらの出発点の違いによる視点のすれ違いは教材以外にもいろいろあります。「中国語教育」と一口に言っても、出発点・視点が違えば見えてくるものも変わってきますね。

いろいろな背景の教材を理解し、うまく使っていきたいものです。

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