たまに質問されますが、私は中国語ネイティブスピーカーではありません。
両親、親戚にも中国と特別に関係の深い人はおらず、私が中国語を学んだのは、まったくの偶然でした。
ネイティブではない日本人が中国語を教えるということは、どういう立ち位置になるのでしょうか。
語学学校のアピール
語学学校のサイトを見ると、多くはネイティブ(だという印象を与える)の画像が宣伝として使われています。

多くの学習者は外国語で会話をすることを目標にしているため、このようなイメージ画像を使うのは正しい戦略だと思います。
学校に通って、先生と会話を楽しんでもらいたいというのは、どの外国語学校でも共通の願いです。
中国語の語学学校でも同じです。
ただ、帰化済で普段は日本のお名前で生活している先生方のお名前を、サイトやパンフレットではすべて中国名で記載しているところもありました。
また、非ネイティブ講師の存在には一切触れないなど、悲しくなるような扱いをうけたこともあります。
そうしたアピールには、正直少し違和感があります。
※以下、わかりやすく表現するため、中国語ネイティブ講師(中国語母語話者)を中国人講師、非中国語ネイティブ講師(非中国語母語話者)を日本人講師と呼びます。
私の先生たち
私が初めて中国語を学んだ高校では、以下のように中国人講師と日本人講師が協力して教えていました。
中国人講師
会話・発音・作文
日本人講師
文法・試験対策
私自身もこの体制で教えたことがあります。それぞれの先生が強みを活かし、弱みを補い合って四方八方から学生にアプローチする形です。
先生の特色によって使い分けよう
では、それぞれの得意分野とは何でしょうか?
・中国語が不自然かどうかをチェック
→中国人講師の出番です。非文を瞬時に見分ける、これが日本人講師にとっては一番羨ましい能力です。
・自然な文章に添削してもらいたい
→こちらも中国人講師の出番でしょう。翻訳でも、チェッカーは翻訳先言語のネイティブが担当します。個人のSNSに投稿するのか、それとも公式な文章なのか、などの文章のレベル別にも対応できる人がありがたいですね。
最近はAIがこれをやってくれるので、こちらも上手く取り入れていきたいところです。共著で参加させていただいた『中国語三行日記』では、氷野先生がChatGPTを使った日記の添削プロンプトを公開しています。
・文法解説
→中国語の細かなニュアンスを知りたければ中国人講師に。習得するコツを知りたければ日本人講師に。
・発音
→文章全体の抑揚、読み方のチェックは中国人講師に。一つ一つの発音について、舌の位置や出し方のコツを知りたければ日本人講師に。
私は音読大好き人間なので、前者も後者もやります。
・会話
→会話のスムーズな流れを楽しんだり、言い回しを訂正してもらえるのが中国人講師の強み。日本人講師からはその先生が実際に便利だと感じた言い回しや表現が学べます。
もちろん、先生個人によって得意不得意があり、すべてがこうとは言えませんが、せっかく色々な先生がいますので、その先生の特色によって使い分けたいものです。学習者は学費の分、効率よく先生を使う工夫も必要ですね。
私の強み
こうして見ると、日本人講師というのは学習者の先輩の立ち位置であることがわかります。
日本人講師の大きな強みは、「中国語をゼロから学んだ経験」これにつきます。
できなかった発音ができるようになった、その経験こそが私の宝物であり、強みです。
発音や文法に関して、「なんでこうなるの???」「先生の口の中全部見せてください!!!(強火)」
と思っていたあの頃の気持ちが、今の私の基本になっています。

原田夏季(はらだなつき)
東京生まれ。高校から中国語を学び、大連へ留学。現在は企業・学校で中国語を教える他、舞台通訳も手掛けている。SNSでは「夏季老師」として知られ、Xでは中国語学習のヒントや文法まとめメモを更新中。Youtubeでは入門者向けレッスン動画ほか、李軼輪先生や李姉妹とともに「一分中文」を配信している。著書に『ゼロからはじめる中国語レッスン』(アルク)『超初級から話せる 中国語声出しレッスン』(アルク)『夏季老師の中国語の口を手に入れる 中国語教室』(三修社)などがある。
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