思えば、私の中国語学習は「楽しみながらついでに勉強になるコンテンツ」とともにありました。
歌、ドラマ、映画、ゲーム、漫画…それらをひたすら探し、食い漁っては次の獲物を探し求めてさまよう屍です。
そんな私に、今年、ご褒美のようなコンテンツが降ってきました。否、石を割って飛び出してきました。
『黒神話:悟空』です。
『黒神話:悟空』は、中国のゲームスタジオ「科学遊戯」が開発したアクションRPG。
他のゲームで言うなら、ダークソウルとかエルデンリングとかの、いわゆる死にゲーです。
YouTubeで最初に「こんなん作ってるよ〜!」という映像を見たのが4年前。その世界観と作り込み!ワクワクしました。
でも、同時に心配でもありました。だって、こんな大きなプロジェクト、本当に最後まで完成させてくれるのかな?と。
ゲーム開発というプロジェクト自体、途中で中止になることもままある上に、中国のゲーム開発事情がどうなっているかよく知りませんが、中国のエンタメがお上の意向やらなんやらで改変・中止しているのを見ていたので…。
西遊記といえば、こちらの作品も楽しみにしていましたが結局ポシャったみたいで残念だった経緯もあり、心配していたのです。
でも出た。PS5とSteamで。出た。
神翻訳
音声は中国語か英語を選べます。私は中国語音声で遊びました。日本語字幕の翻訳が本当にすばらしくて!
特にこの、「まだ翻訳が間に合ってないからちょっと待ってね」がお気に入り。(今はもう見られません)
敵の詳細を見られる「影神図」という、ポケモン図鑑みたいなシステムがあるのですが、こちらの翻訳も大変わかりやすく、世界観にひたれるものでした。
なんの気無しに倒した敵に悲しいエピソードがあったり、西遊記ファンはニヤリとするんだろうな…。という小話もたくさんあり、毎回ボスを倒した後に影神図を読むのが楽しかったです。
もちろん、言語を中国語にすれば中国語でも楽しめます。影神図の対訳で学ぶ中国語講座をやりたい。
ゲーム音楽のすばらしさ
ゲームの魅力を語るのに欠かせないのが音楽。
死にゲーなので、敵と戦っている時はほんの一瞬も気が抜けないし、長い時は15分くらい全集中で、大汗をかきます。
いつものように不白(中ボス)と戦っている時、その全集中が途切れる名曲が流れました。
それが、『往生咒』です。
往生咒とは、中国浄土宗で唱えられるお経の一つ。「阿弥唎哆 ā mí lì duō」「 毗迦兰帝 pí jiā lán dì 」が気持ちいい。
他にも、首なし法師の三絃ラップも最高です。こんなの、全員テンション上がる。
「陝北説書」は中国西部の陝西省北部の伝統芸能だそう。方言が気持ち良すぎる。
最高のロケーション
美しい景色を見ながら散歩するだけでも、楽しい。フォト機能でひたすら写真を撮るのもいい。
実在の寺社仏閣をスキャンして作っているとのことで、仏像や小物のバリエーションの多さにこだわりを感じます。
マップがとても広いので、迷いに迷いました。地図もないので記憶だよりです。探索はつらい。でも景色がいいからやっていけます。
もっと西遊記を知りたい人むけおすすめ本
最後に、このゲームがきっかけで西遊記沼に落ちた私が購入した本を紹介します。
大人が読みたい西遊記 時空旅人別冊 (サンエイムック)
ムック本です。写真がたくさんでわかりやすく、手っ取り早く西遊記の世界に浸れます。
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西遊記 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 (角川ソフィア文庫)
めちゃくちゃ長い原作の見どころだけ抜粋し、丁寧でわかりやすく解説されています。
原作のブラックな部分も垣間見えて面白いです。
西遊記 (10歳までに読みたい世界名作)
小2の息子が初めて字だけの本を一冊読み通した、記念すべき本になりました。
黒神話:悟空の影響ですっかり西遊記にハマった息子は、この本を読んで西遊記世界への理解を深め、学芸会で牛魔王の役をオーディションで勝ち取るまでに至りました。
原書にチャレンジしたいぜ!な人におすすめな記事はこちら!どの本から入ればいいのかを、オタク向けに細かく解説してくれています。
全体の感想
今回、クリアまでに要した時間は72時間でした。
一番苦戦したボスは毒敵大王、思い出深いボスは虎先鋒です。強かった。
何度も何度もチャレンジして、倒せないとコントローラーを振り回して悔しがり、勝つと夫と息子と小躍りして喜びました。
妖怪たちのキャラ設定、デザインの格好良さも印象に残りました。手が付けられない不良の悟空と、真面目な学級委員の三蔵法師。500年前の作品ですがキャラ立ちが半端ない。
そして遊びやすさ、効果音、すべて大満足でした。バグにも遭遇しませんでした。
制作陣の西遊記への愛、ゲームへの熱量、ユーザーへの気持ちが伝わってきました。愛の感じられるゲームはいいゲームです。
私のような西遊記エアプ勢でも、十分に楽しめます。それでも、少し知識があれば世界観をより一層楽しめるので、今からでもぜひ履修を!
あー楽しかった!DLCも待ってます!
ゲーム記事、こちらにも書いております。もしお暇ならぜひ読んでみてください。(中国語要素ゼロです)
原田夏季(はらだなつき)
東京生まれ。高校から中国語を学び、大連へ留学。現在は企業・学校で中国語を教える他、舞台通訳も手掛けている。SNSでは「夏季老師」として知られ、Xでは中国語学習のヒントや文法まとめメモを更新中。Youtubeでは入門者向けレッスン動画ほか、李軼輪先生や李姉妹とともに「一分中文」を配信している。著書に『ゼロからはじめる中国語レッスン』(アルク)『超初級から話せる 中国語声出しレッスン』(アルク)『夏季老師の中国語の口を手に入れる 中国語教室』(三修社)などがある。
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