発端のポスト
まずはこのツイートをごらんください。
日本語の「い」って、舌に力入れて発音するものだと思うし、中国語の「yi」も同じだと思うんだけど、日本語の「い」を唇を横に引くことで発音している人もいるってことか…。(学び)
— 夏季🦪日本人中国語講師 (@Natsuki_CHTH) December 2, 2021
中国語の「xiang」が「シャン」っぽくなるのはこの辺も原因の一つかなぁ。
「e」や「ü」など、日本語に無さすぎる母音が伝わるレベルになったあとは、「中国語らしさ」や「流暢さ」を目指して、それぞれが中国語の大海原に出発するのですが、そこでまずぶつかりやすいのがこの「yi」。
「yi」が弱いと、どうにも強さがでない音になりがちです。
これは舌を鍛えるしかないのかなぁ、なんて悩んでいた時にしたこのポストが、2年経った今でも心に残っています。
このポストに
『私は日本語の「い」を言う時に舌に力を入れたことがありません』
『唇を横に引いて発音しています』
とのお声があったのです。
これには驚きました。私は日本語の「い」を言う時、唇ではなく舌に力を入れるからです。
そこで、こんな動画を撮ってみました。
撮ってみました…。こういうことなんですが… pic.twitter.com/otxA13VJLx
— 夏季🦪日本人中国語講師 (@Natsuki_CHTH) December 2, 2021
突然の顔面ドアップですみません。
この動画では『「あ」の口』と言っていますが、実際の「あ」はもっと口の開け方が小さいので、「口を大げさに開けたまま「い」を言えるか」になりますね。
つまり、どういうこと?
これがきっかけで、こう思うようになりました。
もしかして、口の中の解像度は私が思うよりもずっと個人差が大きいのでは?
「口の中の解像度」というのは、「今、舌がどの位置にあるか」や「舌がどんなポーズをとっているか」を鏡を使わずに察知する力のことです。
口の中のことですから、話している時の舌の動きというのは見えにくいものです。
MRIを使った動画なんかもあるんですが、横からの映像なのでちょっとピンと来なかったり。
少なくともこの動画から分かるのは「日本語を話している時、舌は死ぬほど動きまくっている」ということ。
かくいう私も、中国語を習い始めの時に横から見た舌の図を見ても、さっっっぱり分からなかったクチです。
何がいいとか悪いとかじゃなくて
舌を使うからいい発音、とか、そういう主張じゃありません。
発音を教える者として、どうしても基準になるのが、日本語ネイティブでゼロから中国語発音を学んだ自分自身。
でも、それはもう随分昔の話で。
中国語を話せなかった時代は、記憶の彼方に遠ざかりつつあります。
「舌の位置の説明」というのはできるようになった者だからこそわかる、逆説的なものなのかもしれない。
それを常に頭の片隅に置いておかないといけないな、と思います。
原田夏季(はらだなつき)
東京生まれ。高校から中国語を学び、大連へ留学。現在は企業・学校で中国語を教える他、舞台通訳も手掛けている。SNSでは「夏季老師」として知られ、Xでは中国語学習のヒントや文法まとめメモを更新中。Youtubeでは入門者向けレッスン動画ほか、李軼輪先生や李姉妹とともに「一分中文」を配信している。著書に『ゼロからはじめる中国語レッスン』(アルク)『超初級から話せる 中国語声出しレッスン』(アルク)『夏季老師の中国語の口を手に入れる 中国語教室』(三修社)などがある。
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